「結婚しているのに、万が一自分の子どもではなかったらどうしよう…」そんな不安を抱える男性は、実は少なくありません。生物学的に言えば「托卵(たくらん)」と呼ばれる現象が存在し、一部の動物界ではかなり一般的です。では、人間社会においても“托卵”が起こり得るのでしょうか? もしも起きた場合、男性はどのように対策すればいいのでしょうか?
この記事では、生物学の視点から「托卵」を解説し、さらにヒトの女性(メス)が托卵行為に至る理由、男性(オス)が騙されないための方法を探っていきます。
「托卵」とは何か
生物学における「托卵」の定義
「托卵」 とは、本来はカッコウやホトトギスなどが示す繁殖戦略で、「自分の卵を他の鳥の巣に産み落とし、育児コストを相手に負わせる行動」を指します。
親となるはずの鳥は、卵を見分けられずに他人(他鳥)の子を育ててしまうため、“実質的に育児コストだけを奪われている状態”に陥ります。一方、托卵する鳥は自分が子育てに割くエネルギーを節約しつつ、自分の子孫を増やすことができるわけです。
ヒトにおける「托卵」的現象
人間の社会でも、「オスが自分の子供ではない子を知らずに育てている」というケース」が、たびたび報告されます。生物学の観点では、これを動物界の「托卵」にたとえて「ヒトの托卵」と呼ぶことがあります。
2005年にイギリスで行われた研究では、夫婦の子であるはずの25人に1人、約4%の割合で父親が夫ではないと発表されましたが、表立って発覚しているだけでこれだけであり、こんなものは絶対に隠し通したいものなので、実際には10%をゆうに超えていると考えられます。
ヒトのメスが“托卵”してしまう理由
遺伝子的なメリットと養育リソース
生物学的に見ると、女性にとっての理想は「遺伝子が優秀で魅力的な男性との子供を授かり、それを経済的に安定した男性に育ててもらう」という戦略です。
もちろん倫理・道徳的には絶対に許されない行為ですが「別の男性との子供を、現在のパートナーに育てさせる」ことで、女性は結婚相手としては選んでもらえないような格上男性と自分の遺伝子を残しつつ、別の男性からは経済的メリットを享受することができる悪魔の戦略です。
社会的・経済的なプレッシャー
女性が托卵を選ぶ背景には、経済的な不安や、より優秀な遺伝子を求める欲求が複合的に絡みます。
人間の脳は原始時代からほとんど変わっていないため、女性が魅力的だと感じる男性はイケメン、運動神経が良い、声が通る、といった身体的に優れた男性です。しかしこういった男性が必ずしも経済的に成功するわけではありません。
そこでヒトのメスは、魅力的な男性との間に子をもうける一方で、安定した経済力を持つ男性を“父親役”として確保しておく、という戦略を取ることがあります。
ヒトのオスが托卵を避けるための手段
自分以外と性行為をしていない女性を選ぶ
ニコラス・H・ウルフィンガー(Nicholas H. Wolfinger)が、国立衛生統計センター(NCHS)が実施する全米家族成長調査(NSFG)のデータを用いて行った分析をはじめとし、様々な統計で、性的パートナー数が少ない女性ほど浮気や離婚のリスクが低いことが証明されています。
- 性的パートナー数が「0~1人」の層での離婚率が最も低く、かつ他の層よりも長期にわたり安定している。
- パートナー数が「2~3人」「4~5人」…と増えるにつれ、離婚リスクが高まる傾向を示す。
- 浮気率(不貞行為の自己申告)に関しても、パートナー数の多いグループほどその後の婚姻関係での不貞行為が高め、という結果が出ている。
また、性的経験のなかった女性と比較して、1人から3人の男性と性的経験のあった女性では4倍、4人以上の性的経験のある女性では8.5倍も浮気をする危険性があることがわかっています。
さらに別の研究では婚前交渉と離婚率に相関性があることがわかっており、やはり性経験の多い女性は離婚率が高く、また、意外なことに経験人数が少ない女性でも処女でなかった場合は離婚率が上がることがわかっています。
10代で性行為をしていない女性を選ぶ
米国・アイオワ大学が3793人の成人女性を対象に行った調査では、「10代で処女を失った女性は、顕著に離婚率が高くなる」ことが報告されています。
この調査結果によれば、10代の時に処女を失った女性の31%は、結婚5年以内に離婚し、さらに47%の女性が10年以内に離婚していました。これは、性経験をしなかった女性に比べて約2倍も高かったことがわかっています。
さらに、16歳以前に処女を失ってしまうと、離婚率は極端に高まることもわかっています。
科学的手段:DNA鑑定
托卵を避けられなかったとしても、現代では被害を最小限に留める方法があります。DNA鑑定です。
- 出生後にDNAテストを受ける
- 結婚前からリスクについて理解しておく
疑念が大きい場合は、DNA鑑定(親子鑑定)という科学的な手段があります。近年は検査キットや専門の鑑定機関も増えているため、比較的容易に行えます。
法律面や金銭面などを含め、「自分の子供ではなかった」場合にどうなるかを把握しておくことも重要です。国によっては、離婚時の養育費や財産分与などについて複雑な問題が生じ得ます。
托卵リスクを踏まえて、愛を守るために
恋愛や結婚は、信頼と愛情が土台となる関係です。托卵という戦略は過激に見えますが、私たちが思っている以上にヒトの社会に蔓延っているのが現実です。
自分の遺伝子を守り、パートナーとの愛をより固く結びつけるためにも、お互いに向き合い、魅力を育み合う努力を重ねたいものです。