外見的魅力が低いにもかかわらず、なぜか自分のことをイケメン/美女だと思い込んでいる、そう振るまっている人を見たことがあると思います。実は研究結果としても外見的魅力が低い人ほど自分の外見を高く評価する傾向にあることはわかっています。今回はそんなお話。
研究が示す自己評価のズレ
2020年、イースブルック大学の研究チームが興味深い実験を行いました。1100人の男女を対象に、自分の身体的な魅力を評価させ、その評価を第三者の客観的な判断と比較しました。その結果、次のような傾向が明らかになったのです。
魅力が低い人ほど自己評価が過剰
魅力的でない人ほど、自分の外見を「平均以上」だと評価し、第三者の否定的な評価をほとんど意識していないことがわかりました。いわゆる「自己評価のズレ」です。彼らは、自分が「イケてる」「まだマシ」と本気で信じていることが多いのです。
「ダニング=クルーガー効果」とは?
この現象は心理学で「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれます。能力が低い人ほど自分の欠点に気づかず、過剰に自信を持つ傾向があります。たとえば、テストで赤点を取る学生ほど「今回は結構できた」と言うようなケースが典型例です。
今回の実験ではこの「ダニング=クルーガー効果」が外見的魅力度に対しても発揮されることが確認できたわけです。
魅力的な人ほど自己評価が正確
一方で、外見的魅力が高い人(いわゆるイケメンや美女)は、自己評価がより正確であることも明らかになりました。彼らは、自分の魅力を過大にも過小にも評価せず、客観的な判断に近い評価をしていたのです。
つまり、「魅力的な人ほど自分を客観視できる能力が高い」ということです。もちろんナルシスト的な言動をする場合もありますが、実際にイケメン/美女であれば客観的な評価と大きくズレてはいないわけです。
第三者評価の判断力も魅力に比例
さらに、この研究では面白い事実も発見されました。それは「魅力が低い人ほど、他人の魅力を正確に判断できない」という点です。
- 魅力が高い人は、相手の外見的魅力を正確に評価する能力が高い。
- 魅力が低い人は、他人の魅力に対する客観的判断力も低く、相手の魅力を過大評価する傾向がある。
この結果は、日常的な経験にも通じるものがあります。たとえば、合コンで幹事の外見的魅力度が低い場合、「イケメン/美女が多いよ」という言葉の信憑性は低くなるということです。
こうした現象は、自己評価のズレが他人への客観的な判断能力にも影響していることを示しています。
「自己欺瞞」が招く心理的罠
このように、魅力が低い人ほど自己評価が過大になる傾向は、「自己欺瞞」とも関係しています。自己欺瞞とは、自分を騙し、現実よりも良く見せようとする心理のことです。
一時的には自己肯定感を高め、ストレスを軽減する効果もあります。しかし、現実とのギャップが大きくなるほど、否定的なフィードバックを受けた際のショックも大きくなります。自己欺瞞に頼りすぎると、成長や改善の機会を逃してしまうのです。
客観性を鍛える重要性
では、この「自己評価のズレ」を防ぎ、より客観的に自分を評価するにはどうすれば良いのでしょうか?
謙虚な姿勢を持つ
自分は「まだまだ未熟だ」と認識することで、成長のための情報を取り入れやすくなります。心理学的にも、謙虚さと自己成長の関連性は多くの研究で示されています。
第三者の意見を取り入れる
自分の評価だけでなく、他者からのフィードバックを参考にすることで客観性が養われます。
「自分はできる」と感じた時こそ、その自信を努力に変えることが大切です。客観性を鍛え、自分の真の魅力を理解することが、成長と成功への第一歩となるでしょう。