今回は社会心理学用語の「ハロー効果」が恋愛においてどのような影響を及ぼすのかについて考察・解説します。
ハロー効果とは
ハロー効果とは、ある対象を評価する時に、わかりやすい特徴に引きずられて他の部分についての評価が歪められる、一種の認知バイアス現象のこと。1920年に心理学者エドワード・ソーンダイクの論文によって初めて用いられた言葉で、現在は社会心理学の用語として広く知られています。
例えばビジネスで1発当てた成功者がテレビで何の根拠もない話をしていても視聴者が権威性を感じてしまうことや、笑顔の素敵な人をついつい信頼してしまうことなどが挙げられます。(詐欺師の笑顔は本当に素敵なので気を付けてほしい。)
日本でも古くから残っていることわざに
- あばたもえくぼ
- 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
というものがあり、昔の人たちも体感や経験則からこのハロー効果を知っていたのでしょう。
ハロー効果を恋愛に当てはめてみると
頭の良い人は予想が付いたかもしれませんが、このハロー効果は恋愛に当てはめて考えると残酷な現実が見えてきます。
つまり
- ルックスが良い人は性格も良く見える
- 体型が魅力的な人は顔もイケメン/美女に見える
- 運動神経の良い人は歩き方や何気ない仕草が美しいため、顔もイケメン/美女に見える
- イケボはカッコよく見えてくる
このように、初対面でわかりやすいモテ要素を持つ人は、本来なら全然関係のない他の要素までどんどん良く見えてくる。そうなると良いところがどんどん見えてくるので、さらに他の部分まで良く見えてくる、というループに入ります。
逆ハロー効果
さらに追い打ちをかけるのが「逆ハロー効果」です。
「ハロー効果」は一般的に良い方向への認知バイアスを指しますが、原理的には良い方向だけでなく、悪い方向にも同様に働きます。「逆ハロー効果」「ホーン効果」「悪魔効果」とも呼ばれます。
つまり
- ブサイクは性格も悪く見える
- デブやガリは顔もブサイクに見える
- 運動音痴は歩き方や何気ない仕草がキモいため、顔もブサイクに見える
- ブサボはカッコ悪く見えてくる
という身も蓋もない話になってしまいます。
最初に良い印象を与えたらそれがどんどん強化され、逆に一度悪い印象を与えてしまったらそれも悪い方向にどんどん強化されてしまうということ。あまりに救いがなさすぎます。
恋愛にハロー効果を有効活用する方法はないのか
では、このハロー効果を恋愛に有効活用する方法はないのでしょうか。
ペンシルベニア大学の研究チームが興味深い研究結果を挙げています。
それは「他人に寛大な行動を取る人はイケメンまたは美女と評価される傾向が高かった」というものです。これは本人に直接親切にした時に限らず、第三者に親切にしたことを評価者が知ってさえいれば、イケメン/美女と評価される傾向が高かったようです。
さらに、思春期後期から高齢者までの被験者を54年間かけて調査したデータセットを元に、「外見的な魅力の第三者視点での評価」と「ボランティア活動の多さ」の相関を調べたところ、ある程度の相関が見られたようです。
こちらは「この人はボランティアをしている」という情報を伏せた状態での調査で、つまり「寛大・親切な行動をしていることが相手に伝わっていなくても見た目の評価が上がる」可能性を示唆しています。不思議ですね。
ただ、これは相関関係であり、因果関係は不明なため、「ボランティアをするとイケメン/美女に見える」のではなく、「イケメン/美女ほどたくさんボランティアをしている」と考える方が自然です。
実際にイケメン/美女ほど年収が高い傾向にあったり、社会的に高い地位に付きやすい傾向があったり、性格が良くなるという研究結果まであります。「収入や生活、心に余裕があるからボランティア活動をしているのだ」とすれば、やはり救いのないお話になりそうです。
ただ、良い印象を与えれば他の部分まで良く見えるというハロー効果自体は活用の余地がありそうです。
ブサイクであれば最初は顔を隠してネットで交流して先に良い印象を与えておくとか、体型に自信がなければある程度親密になるまでは身体のラインがわかりにくい服を着ていくとか、ブサボであればチャットで良い印象を与えてから電話したりあったりする、とかですね。
悪い印象を避けるだけではダメで、良い印象を与える必要があることは意識しておきましょう。そう考えると巷で言われている「初デートの時は美容院に行って、新品の服を着て清潔感を出せ」というのは理にかなっています。