恋愛と脳内化学物質

恋愛と脳内化学物質

「恋の病」という言葉がありますが、科学的にも恋愛をしている状態では脳内で様々な化学物質が合成され、薬物中毒に近い状態になっていることがわかっています。この記事では恋愛と脳内化学物質の関係についてまとめます。

恋愛の正体

皆さんは恋愛とはなんだと思いますか?相手を好きになること?でも好きにも色々ありますよね。しかし恋愛をしている時は、自分が普段考えていることや感じ方が変わったり、不自然な胸の高鳴りや、胸がキューッっと苦しくなる経験がわかる人は多いのではないでしょうか。

大昔は「運命」や「不思議なこと」として片付けられていましたが、現代では恋愛している状態ではなぜそのような現象が起きのか、科学的にほぼ解明されています。

恋愛している状態では脳内の化学物質が通常よりも多く分泌されたり、逆に他の化学物質の分泌が減ったりして、物理的に通常とは異なる状態になっているのです。

では実際にどのような化学物質がどう増減し、どのような影響を与えているのかをみていきましょう。

恋愛の初期段階で増える脳内化学物質

アドレナリン(Adrenaline)

恋愛の特に初期の段階において、アドレナリンの分泌量が増加することがわかっています。

アドレナリンは興奮物質とも呼ばれ、心拍数と血圧を上昇させる働きがあります。好きな人との出会いや会話で緊張したり心臓がドキドキする、初めてのデートや大切な瞬間に手汗をかく、といった現象はこのアドレナリンが増加していることが原因です。

ドーパミン(Dopamine)

恋愛の特に初期段階において分泌されやすく、相手を見たり触れたりするだけで大量に分泌されます。

快楽物質とも呼ばれ、快楽や報酬感をもたらす神経伝達物質です。高揚感や幸福感をもたらし、「もっと相手に会いたい」「もっと親しくなりたい」という欲求や動機を生み出します。

恋愛が中毒的な症状を引き起こす大きな原因がこのドーパミンであり、脳内に快楽物質が大量に溢れることによってあらゆるものが素晴らしく感じられ、薬物中毒に近い状態を作り出してしまいます。

ドーパミン自体も中毒性が高く、減少すると脳が強くドーパミンを求めるため、好きな人のことばかり考えてしまい他のことが手に付かなくなってしまいがちなのもこれが原因です。

フェニルエチルアミン(Phenylethylamine, PEA)

興奮感や幸福感を誘発し、恋に落ちた瞬間の「ドキドキ感」に深くかかわっています。

同じ相手と一緒にいて分泌されるのは最大でも3年程度であることがわかっており、いわゆる「3年の壁」、長く付き合ったカップルが幸福感が薄れ別れやすくなってしまうのはこれが欠乏することが原因の1つとされています。

テストステロン(Testosterone)

男性ホルモンですが、女性でも分泌されます。

性欲や攻撃性を司る役割があり、男性は特に恋愛初期において上昇します。好きな人に猛烈なアタックを仕掛けたくなったり、数回のデートで強引な誘いをかけたい衝動に襲われるのはこのテストステロンが深く関わっています。

また、女性はこのテストステロン値が高い男性を好む傾向にあることが統計的にもわかっており、男らしく、力強く、粗野で乱暴な男性に自らすり寄ってしまう習性がある生き物です。

恋愛の初期段階で減ってしまう脳内化学物質

セロトニン(Serotonin)

幸せ物質とも呼ばれますが、ドーパミンとは反対に、情緒の安定に関与し、気持ちを安心させたりリラックスさせる働きがあります。

恋愛の初期段階ではセロトニンが減少してしまうため、不安感が増し、悪くすれば強迫性障害に近い状態になってしまうこともあります。相手の愛情を確かめなければ気が済まない、という気持ちはセロトニンの減少が大きな原因です。

特に女性は男性に比べて元々セロトニンの分泌量が少ないため、より不安を感じやすい傾向にあります。

中長期的な恋愛で増加する脳内化学物質

恋愛初期の段階は脳内が薬物中毒に近い状態になり、情熱的で衝動的な恋愛を求めますが、その時期を乗り越え中長期的な関係を築くことができれば、穏やかな愛情を高める化学物質が増加し始めます。

オキシトシン(Oxytocin)

スキンシップや親密な関係で分泌され、愛情や絆を形成を促進します。

信頼感や安心感を高め、親密な関係の維持に寄与します。

セロトニン(Serotonin)

恋愛の初期段階では減少してしまうセロトニンですが、中長期の関係になると増加します。

情緒の安定に関与し、気持ちを安心させたりリラックスさせる働きがあります。

脳を化学物質に支配されないために

恋愛ではその失敗の多くがこれらの脳内化学物質によってもたらされがちです。

典型例でいえば、女性がテストステロン値の高い男性を見ただけでドーパミンやフェニルエチルアミンに脳を支配され、自ら進んで暴力的な男性に使い捨てられることを選んでしまう、といったことが挙げられます。

脳内化学物質の働きは非常に強く、これを理性で抑え込むことは薬物中毒者が薬物を絶つだけの意志力が必要となります。しかし何の訓練もしていない私たちが脳内化学物質に抗うのは並大抵のことではなく、動物的な本能に支配されてしまう人が大半です。

では私たちが恋愛に侵された自身の脳を理性でコントロールすることはできないのでしょうか。かなり難しいですが、多少なりとも効果の見込める方法があります。

バランスのいい食事

脳内化学物質も食事により作られます。恋愛初期に特に減少しがちな安定物質であるセロトニンを増やすことで、ドーパミンやフェニルエチルアミンといった快楽物質による衝動的な感情を和らげる効果が期待できます。

セロトニンの材料であるトリプトファンを多く含むチーズ、豆腐、卵、牛乳、バナナを食べることでセロトニンの合成量を増やすことが期待できます。

また、糖質が不足しているとインスリンが分泌されず、トリプトファンが脳にたどり着くことができません。過度な糖質制限もあなたの脳内を狂わせる危険性があることに留意しましょう。

適度な運動

適度な運動はセロトニンの分泌量を増加させることが期待できます。

特に社会人になってからは運動の機会が不足しがちなので、中学校や高校の授業にあった体育の時間(週に2~3回)程度は運動をするよう心がけましょう。

規則正しい生活

目覚めてすぐに日光を浴びるとセロトニンの分泌が促されることがわかっています。

しっかりと朝起きて夜寝る生活を習慣づけることで、脳内化学物質による衝動的な意思決定を和らげる効果が期待できます。

実は日光は人間にとってかなり重要で、夜の仕事をする人々が情緒不安定になりやすかったり、日射量の少ない日本海側の地域で暮らす人はうつ病になる割合が有意に多いなど、日光の不足が情緒に影響していることを示唆する研究が各分野から発表されています。

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