私たち現代に生きる日本人は恋愛をした先に結婚がある、結婚のための相性を確かめるために恋愛をする、という価値観を持ちがちですが、これは歴史的にはつい最近の先進国に限定された考え方だったりします。今回は恋愛と結婚の歴史について振り返ってみましょう。
恋愛と結婚の多様な歴史
現在の日本は一夫一婦制ですが、世界には一夫多妻制やその他の結婚形態を持つ文化も存在します。
日本でも、昔は親が決めた相手と結婚する「お見合い結婚」が一般的で、恋愛結婚はむしろ例外でした。
つまり、「恋愛=結婚」という考え方は、近代になってからの時代の流れの一つです。
中世ヨーロッパの恋愛事情
中世ヨーロッパで人気だった物語では、騎士と貴族の女性の恋物語が描かれます。しかし、それらの恋愛は報われることが少なく、多くは禁じられた恋でした。
理由は、女性がすでに他の男性と婚約していたり、身分が異なっていたりするからです。このように、当時の恋愛は結婚とは切り離されたものでした。
恋愛観を変えた近代の倫理観
近代になると、「ブルジョワジー」と呼ばれる資産階級が台頭し、これまでの貴族的な価値観から、倫理観や道徳を重視する社会へと移行しました。この中で「恋愛」と「結婚」を結びつける考え方が生まれたのです。
19世紀には「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」という考えが登場し、20世紀になるとこれが普及しました。このイデオロギーでは、結婚にふさわしい相手と「愛」を育むことが重要視され、恋愛と結婚が一体化していきました。
恋愛や性愛、そして相手との感情的な結びつきが結婚の基盤とされるようになり、「恋愛の延長線上に結婚がある」という考え方が一般的になっていきました。
日本での恋愛観の変化
ある研究では、1970年代から2000年代の雑誌記事を分析したところ、1970年代には恋愛のゴールとして結婚が明確に描かれていました。しかし、1990年代以降は「恋愛=結婚」という図式が必ずしも描かれなくなり、恋愛そのものを楽しむ風潮が広まったとされています。
これは、恋愛と結婚が分離され、恋愛自体を楽しむという価値観が普及したことを示しています。むしろ今では、「良い結婚をするために恋愛をする」のではなく、「恋愛を楽しむ中で結婚に至ることもある」という時代になっています。
恋愛と結婚の形は時代とともに変化してきましたが、その背景には社会の変化や人々の価値観の移り変わりがあります。
現代日本にいる私たち恋愛結婚が素敵だものだと考えがちですが、それは当然のものではなく、歴史的にはそれで社会がうまく回ったことはほとんどない、歴史的には結婚とは家や生活の都合でやってきたもの、ということは知っておいて損はないでしょう。